Act.6

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やがて駅前のラーメン屋へとたどり着いて、誉さんと一緒にラーメンを食べる。 食事の間も必死に熱いラーメンをすする私を、柔らかく笑いながら見つめる誉さんの瞳があった。 感情がないとか、謎のコラムニストの螻蟻潰堤かもしれないとか、大吾さんや千波の秘密だとか。 そう言った全ての疑問なんて、正面で微笑む彼を見ていたら、全ては私の思い込みなんじゃないかって思えて来る。 食事を終え会社に戻る間も、誉さんは私の手を優しく握って歩いてくれた。 やはり何もかもが私の思い過ごしに違いない。 そう思い直したその時だった。 私のポケットに入れたままだった携帯が激しく振動を繰り返す。 「……あ……誉さんごめんなさい、会社からかもしれない」 「うん」 彼と繋いでいた手を離し、私はポケットから携帯を取り出した。
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