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そして液晶に浮かんだ名を見た私は、一瞬呼吸を止めてしまった。
おそらくその画面を誉さんも見てしまったのだろう。
それまで穏やかな笑みだった彼の表情が、氷のように温度を失くしたのが分かった。
「…………」
「…………」
空白になった私と彼の間には携帯が繰り返し震える音だけが鳴る。
しかしその音が3回ほど繰り返された瞬間、誉さんは私に言葉を落とした。
「なんで出ないの?」
「…………」
「別に俺に気を使わなくていいよ。クライアントでしょ?」
「……ですよね」
誉さんの言う通りだ。
確かに恭ちゃんは幼馴染だけど、仕事のクライアントでもある。
実際、先週一杯で仕上げるはずだった案件もシステムが間に合わなくて今日まで伸ばして貰っている。
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