Act.6

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不思議そうに私たちを見つめる恭ちゃんに、どう説明したらいいのか分からない。 私が今、お付き合いしている人と紹介すべきなのか。 それとも22年前に恭ちゃんたちと同じ中学だったであろう誉さんと紹介すべきなのか。 しかし私の隣で誉さんは、何も言葉を出さないまま恭ちゃんに軽く会釈をしてみせた。 その様子だけで悟ったのか、私たちに歩み寄った恭ちゃんが口を開く。 「ああ、もしかしてこの人が佳奈の?」 「……あ、うん。えっと……」 彼の名を言おうとした私をそっと片手で制した誉さんは、もう一度恭ちゃんに会釈しながら言った。 「市倉 誉と言います」 「どうも、我妻恭太です。佳奈の幼馴染で……」 まるで誉さんの事など覚えていないように恭ちゃんが挨拶しようとすると、誉さんは表情を変えないままに言葉を放った。
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