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だけど今、私と誉さんの前に立つ恭ちゃんには確かにあの父親の血が流れていると感じられた。
お互いが冷めた表情のまま、向き合う恭ちゃんと誉さんの空気を遮ろうと私は覚悟を決め言葉を放つ。
「あのね恭ちゃん、誉さんは私の大切な人なの。
でも今日は時間もないし、また後日改めて紹介するね」
「…………」
「それとこれ、システム5課で仕上げてもらったデータとうちの会社で仕上げたデザインが入ってるから。
細かい部分の微修正はサーバーにアップされたらやっておく」
「……そう。分かった」
そう答えながらもデータCDを受け取りもせず、恭ちゃんの瞳は誉さんと視線を交差させたままだ。
二人の間のただならぬ空気に、どうしていいものか戸惑っていると、恭ちゃんの背後にもう一人の人物がエントランスから姿を見せる。
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