179人が本棚に入れています
本棚に追加
/32ページ
威圧的な言葉を呟いた唇が私の唇を塞ぐ。
「……っ……」
慌てて逃げようとすると、恭ちゃんの手は私の後頭部を捕えて抑えつける。
必死に逃れようと身体をよじると、恭ちゃんはすぐに私を解放した。
そして表情も変えないままに、恭ちゃんは再び言葉を放った。
「佳奈の誕生日は、仕事で遅くなるから大吾の店には行けない。
だけど12時になるまでには必ず佳奈の家に行く」
「…………」
返事が出来ずに佇む私に微笑むこともないまま、恭ちゃんは背中を向けるとSAKURAシステム開発のエントランスへと消えて行った。
それを呆然と眺めながら私はとてつもない違和感に包まれる。
恭ちゃんがあんな風に感情を剥き出しにしたのを初めて見た。
そしてあんな乱暴に腕を掴まれ、キスをされたことに驚くばかりだ。
だけど……
私は恭ちゃんに捕まれた腕をじっと見つめる。
少し赤みを帯びた手首をさする私を、ビルの上階から見おろす瞳があったことに気づきもしないまま────。
最初のコメントを投稿しよう!