Act.6

4/32
前へ
/32ページ
次へ
野口さんの言葉に今井部長も深く頷く。 「やっぱ野口もそう思ったか?」 「はい。とても想像だけで書いているとは思えなくて」 確かに野口さんや今井部長が言うように、私もそれは心のどこかで感じていた。 この街の土地勘にも長けているし、当時の街の様子も細かに書かれている。 そして移りゆく街の景色や四季の描写もあり、なおかつ……楓さんの死を深く悲しんでいる気がする。 ……まさかこの記事を書いたのは……。 いや、きっと私の思い過ごしに違いない。 だって誉さんは、子供の頃に1ヶ月住んでいただけでずっと東京だったと言っていた。 誉さんと初めて食事に出かけた食堂、まごころだって昔からずっとある定食屋だ。 だけど彼は、あの店のご飯が多いことを知らなかったし、この街に住む人なら一度は行った事があるほど地元の人たちに愛されているお店だ。
/32ページ

最初のコメントを投稿しよう!

179人が本棚に入れています
本棚に追加