Act.6

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彼も仕事中だろうし、すぐに返信はないだろうと思いながら車を発進させる。 まだ通勤ラッシュが残る烏川の橋を渡って国道に合流するも、かなり流れが悪い。 しかし私の携帯が鳴る気配はないまま、SAKURAシステムの駐車場へとたどり着いた。 車を止めて反応のないメッセージアプリを見つめて肩を落とす。 休日出勤までさせられるほど誉さんの職場は忙しいのだろうし、もしかしたら昨夜も遅くまで仕事をしていて、彼はまだ寝ているのだろうか? 地下の駐車場からエレベーターに乗り、1階のカウンターで受付を済ませて小杉さんの迎えを待つ間も、行きかう社員たちの中に誉さんを探す私は、きっと捨てられた子犬のような目をしているのかもしれない。 しかし、会いたい人の姿を見つけることは出来ないまま、私の前にはやはり残念そうな表情を浮かべた小杉さんがやって来た。
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