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ガレージに車を止めた恭ちゃんは、パーキングブレーキをかけると正面を見つめたまま呟く。
「まさかここに佳奈を連れて来ることになるとは……」
「……えっ?」
「いや。
近くに住んでいても、佳奈はこの山頂に来たのは初めてだろ?」
「……うん。って言うか、ここも恭ちゃんちの所有なの?」
「そうだよ。ここは俺の勉強部屋」
「え?!」
「と言っても学校の勉強ではなく、政治についての勉強部屋」
「……あ……」
「佳奈も知ってる通り、俺は生まれた時から政治家になることが必須で、学生の頃から政治についてここで叩き込まれて来た。
だから俺にとってここは拷問部屋のようだった」
「…………」
「そこまでして俺を育てた親父が意地でも県議会から上に行こうとしなかったのは、自分の代で我妻ブランドを確固たるものにして、いずれは国政へと俺を進出させるためだったんだと思う」
そう言いながらも、恭ちゃんの横顔はとても冷めて見えて、私はどう答えていいものか戸惑った。
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