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柔らかな笑みを浮かべて私を止める恭ちゃんは、いつもの優しい彼にしか思えなくて。
心の中にある疑問と矛盾するこの状況をどう噛み砕いたらいいものか分からなくなる。
「……ごめん」
小声で謝った私に恭ちゃんは「意味分かんねーし」と笑って言った。
ソファーに背中を預けてガラスの向こうにある雑木林をぼんやり見ていると、やがて恭ちゃんが落としたてのコーヒーを手に隣の席に腰かけた。
「佳奈はブラックで良かったよね?」
「あ……うん、ありがとう」
「このコーヒー、コロンビア産の浅煎りで少し酸味があるけど美味いよ」
「うん」
隣で恭ちゃんが一口飲むのを見てから、私もすする。
確かにいつも飲んでいるコーヒーとは少し違って酸味が強い気がする。
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