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やがて運転席のドアから乗りこんで来た恭ちゃんは、イグニッションスイッチを押してエンジンを掛けた。
「ちょっと場所を変えてから話そうか」
「……どこに?」
「静かなところ」
恭ちゃんはやんわり微笑むと、パーキングブレーキを外した。
駐車場から出た車は、烏川の橋を直進して観音山を正面に見ながら右折する。
それは私たちが育った片岡町方向へと向かう道だ。
「恭ちゃんの家に行くの?」
「いや、実家ではないよ」
そう答えた彼は狭い路地を左折した。
しばし直進して長い坂道を登って行くと行き止まりとなり、正面には玄関とガレージしかない四角い箱型の建物があった。
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