Act.8

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やがて運転席のドアから乗りこんで来た恭ちゃんは、イグニッションスイッチを押してエンジンを掛けた。 「ちょっと場所を変えてから話そうか」 「……どこに?」 「静かなところ」 恭ちゃんはやんわり微笑むと、パーキングブレーキを外した。 駐車場から出た車は、烏川の橋を直進して観音山を正面に見ながら右折する。 それは私たちが育った片岡町方向へと向かう道だ。 「恭ちゃんの家に行くの?」 「いや、実家ではないよ」 そう答えた彼は狭い路地を左折した。 しばし直進して長い坂道を登って行くと行き止まりとなり、正面には玄関とガレージしかない四角い箱型の建物があった。
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