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付き添うと言うよりは……そう思いかけた瞬間、それまで笑顔しか見せなかった彼女が震えながら呟いた。
「……や……です」
「え?」
「いや……なんです。もう……あんな思いは二度としたくない」
「…………」
今にも泣き出しそうな表情で、きつく唇を噛みしめる原沢佳奈の姿で全てを理解する。
やはりこの子もずっと……被害者のままだ。
ただ辛い過去を封印したくて、毎日を必死に生きて来たのだと。
あの二匹の狛犬がいたから笑顔でいられた訳じゃない。
きっと彼女自身が……強く生きようと努力して来たからこそ、この毎日があったのだ。
「私……子供の頃に一度……」
「もういい。ごめん。何も言わなくていい」
過去を打ち明けようとしてくれた彼女を制して、俺はゆっくりと歩み続ける。
もう「大丈夫」。
必ず俺は、君を消そうとした人物を……見つけてやる。
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