Act.12 Side H

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彼女を抱いたまま、キッチン脇の階段を昇り2階のベッドへと運んで行く。 1LDKのメゾネットという同じ間取りの部屋だけに、聞かずとも2階が寝室であることは熟知している。 ひとりで眠るには大きすぎるダブルベッド。 そこに彼女を横たえて、俺は片手でネクタイを緩め床に落とした。 期待と不安に包まれながら俺を見上げる彼女に、優しくひとつキスをしてからシャツを脱ぐ。 すると間接照明の薄明りの中、俺の身体を見つめていた彼女が呟いた。 「綺麗……」 思わず小さく笑ってしまった。 警察官と言ってもサイバー犯罪特別捜査官の俺は、同じ生活安全課でも現場に出ている城田さんたちほど体力を使う職務ではない。 それでも身体を鍛えることは日常から続けている事だし、バランス良く鍛えるのも仕事のうちだと考えている。 けれどそれを綺麗だと言われたのは初めてだ。
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