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「分かりました。もう二度と……原沢佳奈には会いません」
そう言葉にしただけで、この胸が息苦しいほどに痛かった。
その痛みは必然的に、己がどれほど彼女に強く惹かれていたのかを知らしめる。
『おにいちゃん、佳奈も行く!』と泣きながら、自転車の俺と健斗を追いかけて来た彼女。
その後、彼女が乗附緑地で恐怖に陥ることなど、あの時の俺は考えもしなかった。
そして……
俺の父親が拘束されたことで母親と心配で訪れた警察署内で、俺は原沢佳奈の両親と遭遇した。
あの時の原沢佳奈の両親は、俺を健斗の友達としてではなく、犯罪者の息子として見ていた。
その両親に抱き抱えられながら泣きはらした目で俺を見た原沢佳奈。
二度と忘れることなど出来ない光景が、いまだこの瞼に焼き付いている。
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