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それを裏付けるように彼女は、自分の手首をさすりながら呟く。
「あの土手で……誉さんと出会ったあの日……」
そこまで言った彼女は、まっすぐに俺を見つめる。
その言葉の続きは、俺が仕組んだとでも言うのか。
それとも……。
しかし彼女の言葉の続きを、まるで阻止するかのようにポケットでスマホが振動を始める。
時間的に考えても、おそらく電話の相手は城田さんか斉木さんのどちらかだろう。
彼女の前でその電話を取ることなど出来ない。
だから俺は冷たく彼女を突き放すしかなかった。
「タイムリミットだ」
「…………」
「その続きは、君の誕生日に」
「…………」
彼女の表情は、俺のタイムリミットという言葉を境に変わる。
あの日の楓と同じように……
『誉くんは、絶対に本音を話してくれないんだね』
今にもそう言い出しそうな表情の彼女の言葉を阻止するように、俺は言葉を続けた。
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