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「申し訳ないけど、最悪な誕生日にしてしまうかもしれない」
「…………」
「その答えを全て知っても……」
「……全て知っても?」
君は今と同じ笑顔を俺に向けてくれるのだろうか。
好きだと言ってくれるのだろうか。
心でそんな言葉を呟きながら、俺は小さく笑って首を振った。
「いや、何でもない。じゃあ佳奈ちゃん、またね」
彼女の部屋に本当の思いを置き去りにして、俺は玄関のドアを閉じる。
カチャと小さく音を立て、彼女と俺の間に出来た境界線。
もしかしたら……彼女と交じり合えたのは、これが最初で最後だったかもしれない。
そんな予感に包まれながら、手の中で振動し続けるスマホの画面を見る。
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