Act.14 Side H

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国道へと出た俺は、アクセルを踏む足に力を入れ、通勤ラッシュが始まる前の道を一気に駆け抜けた。 どこか追い詰められたような螻蟻潰堤の声に不安だけを感じる。 署へと向かいながら、今日まで俺が得て来た情報をパズルのピースのように組み立てた。 俺の考えが間違っていないとすれば、今の螻蟻潰堤は限りなく危険だと言える。 そしてもうひとつ……。 俺が密かに探している、唯一真犯人の顔を見た可能性がある人物。 警察官になってすぐに、俺は原沢佳奈の22年前の供述調書を見た。 そこに記されていたのは、幼かった彼女が聞いた救世主の声だ。 誰かに腕を掴まれて『早く逃げろ』と言われたけれど、助けてくれた人の顔すら見られないほど怖くて、必死に逃げたと彼女は供述していた。 もしもその人物が、螻蟻潰堤だとしたら全てが拾い集めたパズルのごとくしっくりと収まって行く。
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