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誉さんの車に少し遅れていた千波と大吾さんの車が隣へと着き、二人が車を降りたのを見て、私は誉さんに言った。
「行きましょう。22年前の真実へ」
「…………」
「私はもう……あなたと出会えたから、何も怖くないです」
微笑んで私は助手席のドアを開ける。
彼の車のコンソールにある、未来を置き去りにして。
「佳奈、大丈夫?」
心配そうに私に手を差し出してくれた千波に掴まって、再び崖へと続く山道を登って行く。
私と千波の後ろでは、大吾さんと誉さんが時折ポツリポツリと会話をしていたけれど、私はもう誉さんに振り返ることは出来なかった。
この山道の先にある真実に向かって、ただ……虚しさを抱きながら私は歩いて行く……。
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