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ズルズルとその場に崩れ落ちる。
冷たいコンクリートに膝まずいて天を見上げた。
こんなにも誉さんが好きなのに。
素直に思いを言葉にすることが出来なかった自分の弱さが虚しさを募らせる。
止まらない涙と、微かに残る彼の香り。
「くっ……うっ……」
きつく唇を噛みしめ、この現実を受け入れようとすればするほど涙が溢れて来る。
「大好きです……誉さん……」
そう言葉に出すことを許されていた、あの頃に戻りたい。
けれど、彼はもうここから……
いや、22年前の事件から歩み出し明日へと歩み出したのだ。
楓さんが願った……うわべだけのフェイクではなく、本当の気持ちと向き合うために。
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