Act.19 Side H

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「……そんなのは所詮、綺麗ごとだよ。 どんなに努力したって幸せになれないヤツも世の中には存在している」 吐き捨てるようにそう言って、我妻は取調室から姿を消した。 静寂を取り戻した取調室で、斉木さんがゆらゆらと瞳を揺らしながら問いかける。 「室長……。我妻の公益通報者保護法適用の申請はどうしますか?」 「…………」 「今の供述を聞いている限り、我妻恭太はそれを望んでいないように思いました」 確かに斉木さんの言う通りだ。 己が犯した全ての罪を認め、もしかしたら我妻自身も一連の事件から歩み出そうとしているのかもしれない。 だとしたら俺にはそれを邪魔する権利などない。 そして何よりも、俺は……正義を貫かねばならない立場の警察官だ。
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