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誉さんを失った喪失感からようやく立ち上がり、私は玄関のドアを開く。
すると3週間の間にドアポケットから溢れ出た、郵便物が散乱していた。
泣きながらその場にしゃがみ込み、それらをひとつひとつ集めて行く。
電気、ガスの検針票、ショップからのセール告知のハガキ、まだ何も知らずに呑気に暮らしていた頃の自分が思い浮かんで虚しくなった。
しかし拾い集めた郵便物の中、少し大きめの白い封筒がその存在を誇示している。
差出人の記載がない封筒を手に、私はようやく真っ暗だったリビングにあかりを灯した。
カウンターにあるペン立てから鋏を取り、慎重に封を開けて行く。
すると封筒の中には四つ折りにされた紙が3枚ほど入っていた。
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