Act.20

27/35

161人が本棚に入れています
本棚に追加
/35ページ
やがて斉木さんの運転する車の窓から、恭ちゃんが収監されている警察署が見えて来た時、斉木さんは悲しそうに呟いた。 「現状、県警のサイバー犯罪対策室は室長あってこそで、まだまだ未熟な捜査官ばかりなのも事実ですが……。 何よりも私は、市倉警視という人も感情を持っていたということに驚いています」 「…………」 「私が知る限り……室長は誰にも心を開くこともなく、誰にも愛情など与える人ではありませんでした。 だけど城田さんが言っていました」 「…………」 「原沢佳奈と言う名を口にするだけで、室長の表情が変わるのだと」 「…………」 「それは今に始まったことではなく、22年前からずっとそうだったと……」 そして斉木さんは小さく笑うと、警察署の交差点でハンドルを切りながら言った。 「つまり市倉誉の心には、22年前からずっと原沢佳奈がいたんでしょうね」
/35ページ

最初のコメントを投稿しよう!

161人が本棚に入れています
本棚に追加