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やがて斉木さんの運転する車の窓から、恭ちゃんが収監されている警察署が見えて来た時、斉木さんは悲しそうに呟いた。
「現状、県警のサイバー犯罪対策室は室長あってこそで、まだまだ未熟な捜査官ばかりなのも事実ですが……。
何よりも私は、市倉警視という人も感情を持っていたということに驚いています」
「…………」
「私が知る限り……室長は誰にも心を開くこともなく、誰にも愛情など与える人ではありませんでした。
だけど城田さんが言っていました」
「…………」
「原沢佳奈と言う名を口にするだけで、室長の表情が変わるのだと」
「…………」
「それは今に始まったことではなく、22年前からずっとそうだったと……」
そして斉木さんは小さく笑うと、警察署の交差点でハンドルを切りながら言った。
「つまり市倉誉の心には、22年前からずっと原沢佳奈がいたんでしょうね」
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