Act.20

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インターホン越しの声は、まるで定型アナウンスのように問いかける。 「面会のご希望ですか?」 「はい」 「身分証明書をご用意して、右側の長椅子でお待ちください」 言われた通り、長椅子に腰かけて鞄から免許証を取り出し待っていると、重厚なドアから年配の看守が顔を出した。 「誰に面会?」 「あっ……あの我妻恭太です」 「ああ、我妻君ね。はいはい。じゃあ身分証明書見せてくれる?」 慌てて立ち上がり免許証を差し出すと、看守はじっくりと写真と私を交互に確認する。 そしてやんわりと微笑むとドアを開けて「どうぞ」と中へ促した。 それほど広くない空間の中にデスクが5つ程度並べられ、まるで村田デザイン工房のオフィスとなんら変わらない印象だ。 しかし学校の教室にありそうな小さなデスクの向いに、看守は腰かけると、接見の申込書を机の中から取り出して私の前に置いた。
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