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「佳奈、誉さん、写真撮るから戻ってー」
本堂の方から千波の声が聞こえて来る。
「戻るか」
「はい」
再び誉さんから差し出された手にそっと手を置き、二人で本堂へと戻って行く。
桜吹雪の向こうで白衣観音様は、そんな私たちを静かに見おろしている。
私のお腹で手足を動かし始めた小さな命も、きっと私と同じように観音様の御手を眺め、たくさんの愛を受けながらこの街で育って行くだろう。
「佳奈」
「うん?」
「この命が果てるまで……俺は君とこの子を愛すると誓うよ」
「……誉さん……ありがとう」
吹き抜ける春風と、桜を見下ろす白衣観音様だけが……
私たちの最後の秘密を見守っていた────。
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