ここは彼女らのお気に入りのお店

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彼らを冷蔵庫から取り出し、ひとつひとつラップを外す。 そしてテーブルの上に置き、私はポケットからスマートフォンを取り出した。 右上にセットしているSNSアプリを開くと、色鮮やかな写真の数々が表示された。 私は下にある虫眼鏡のマークをタッチし、『虹色の原石』と入力し、『検索』ボタンを押す。 すると、一番上に虹色のネイルで指先を彩っている女性の写真が表示された。 それをタッチすると、写真の下には短いコメントが書かれていた。 『虹色の原石、すごくキレイ! 一度にたくさんの味が楽しめて、全然飽きなかったよ』 スマートフォンを握る手に力がこもる。 それ以上見ていることができなくて、私はボタンを押してスマートフォンの画面を消した。 目の前では、我が子たちが寂しげに、伏し目がちにして誰かに食べられることを待っていた。 私は食器棚からスプーンを取り出し、カップをそっと持ち上げた。 赤色のゼリーを優しくすくい、自分の口にゆっくりと運ぶ。 苺の味をしたはずのそれは、なぜだか少ししょっぱくて、飲み込むのがひどくつらかった。
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