ここは彼女らのお気に入りのお店

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いつの間にか時間は過ぎて、外はとっぷりと闇につかり、客は店内にひとりも残っていなかった。 店のドアにかけてある看板を「CLOSE」にし、私は重い足取りでキッチンに向かった。 キッチンの扉を開けると、真正面に冷蔵庫があった。 ぼんやりと灰色に輝くそれに手を伸ばし、一瞬躊躇い、そして冷蔵庫の扉に手をかけた。 震える手をゆっくりと手前に引くと、冷気が私を包み込み、ラップをかけられた七色のゼリーが目の前に現れた。 「……今日は四つ、か」 ぽつり、と小さく呟いた。 客の前に出され、その姿をカメラに収められ、満足され、食べられることなく見捨てられた子どもたち。 彼らは心なしか、悲しそうに俯いて見えた。
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