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それから何日か経って、貞治の事なんて すっかり忘れてしまったある日。 当時にしては、うちは最先端の置き型充電掃除機を使っていた。 今でも忘れない、青い四角い縦長の掃除機。それは部屋の角で充電されていて、俺が何気なく掃除機に目をやると 四角い掃除機の縁に、顔はオッサンで体が雨蛙の得体の知れない生き物が足を組んでこちらを見ていた。 ギョッとして、俺は声が出なかった。 でも、そいつは俺を見ると微笑んだんだ。何も喋らないけど、確かに微笑んだ。 何度か瞬きをしたら、その奇妙な生き物は掃除機の上から姿を消していた。 その話を母親にすると 母親はまるで自分も見た事があるかのように「ああ、それはきっと妖精だね、貞治なんじゃない?」って、俺もすっかり忘れていた名前を言った。 そうなのかなあ?と思いながら、翌日、学校で友達にその話をした。 すると、友達は皆で俺の事を嘘つき!と言った。 子供心にこれ以上この話をしたら、孤立するって何となく理解して、その話を封印したんだ。
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