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「最後の仕事の仏さんって、いつ?」 「いいの?来週の土曜日だよ。ご存知の通りお彼岸だからね。他にも沢山の仏様の仕事が入っていて、僕は送迎出来ないんだけど、 今回の亮介にお願いしたいのは 母娘さんだから、2人で来られると思う。 何度かうちをご利用頂いてる お得意様なんだ。交通事故で母娘で亡くなって、もう10年になるかな?」 「なら、なぜ自宅に帰らないの?」 「ご主人が5年前子連れの方と再婚してね。当時3歳だった連れ子さんは8歳になってる。今回の仏さんのお子さんは美咲ちゃんて言うんだけど、美咲ちゃんが事故にあった当時も8歳だったから、今、丁度同じ歳位になってるんだ。 勿論お母さんの陽子さんも、ご主人には再婚して幸せになって欲しいって望んでいたんだけど 自分達が住んでいた家に 別の奥さんと子供さんがいるのを見ながら過ごすのはいたたまれないって」 「そっかあ~~。そりゃあ辛いだろうね~~。うち狭いけど良いのかな?貞治の最後の仕事なら、今までの事は無かった事にして、協力してやらなくもないよ」 「ホント?さすが亮介。ありがとうね」 「後もう一つのお願いって何?」 「あのさ、キャッチボールして欲しいんだ。僕と」 「えっ?キャッチボール?何でまた。それに昼間は外でキャッチボールなんかやってたら、俺は誰もいない相手にボール投げて、誰もいない所から出てくるボール捕って、おかしいだろ?」 「勿論。夜中2時だよ。丑三つ時ってやつ。ははっ。ボールとミットは僕が用意するから。明日の夜中どう?」 「ああ、良いけど。バイトだけど、終わって軽く寝るから、貞治が起こしてくれるなら」 「了解。楽しみだなあ」 「でも、何で急にキャッチボールなんかしたいの?」 「亮介、ほんとに忘れちゃったの?亮介が話してくれたんだよ?僕の名前を付ける時に、亮介のお父さんが王貞治って選手の大ファンで、自分も野球選手になりたいんだって。だから、僕に名前は貞治にしようって」 そうだ。そうだった。 何で貞治だったか、今思い出した。 「そうだったね。貞治よく覚えてるなっ」 「忘れないよ~。嬉しかったもん。憧れのペットは、まず名前をもらえるんだって知ってたから」
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