142人が本棚に入れています
本棚に追加
/25ページ
***
昼食間済ませ、ハロウィンのイベントをやっている会場が見えてきた。
「なんかやってんのか?」
「あぁ、地域のイベント?仮装パーティーだって。」
ニヤリと笑ながら俺を見て「ハロウィンだしな。」と付け足した。
俺の顔が青ざめたなんて言わなくてもわかってもらえると思うけど……。
確実に有栖川の足は、イベント会場へ向いている。
足を止め手を引っ張り、行きたくないと拒否ってみた。
「どうした?見に行くだけならいいだろ?」
「み、見に行くだけだからな!!ホントにそれだけだぞ。」
念には念を押しておかないと、何をしでかすかわからない。
「別にコスプレしようなんて言ってないけど?」
「すでにその言葉が言ってるように聞こえるんですけど!」
こいつといると、段々と突っ込みが上達していきそうな気がしてならない。
「なに、倫太郎。コスプレしたいの?」
「誰が言った。一言も言ってないし、言ったとしてもこんな所でなんて絶対に嫌だ。」
「俺にだけは見せてくれるって事?今日はホントどうしたの?嬉しくなるような事ばっかなんだけど。」
ホントにこいつの思考回路がどうなってるのか知りたい。
白い目で見ていると、後ろから背中を叩かれ俺たちは固まった。
いよいよ、こんな所で知り合いに鉢合わせてしまったのか……。
有栖川も、驚いた表情をしている。顔を合わせたまま小さく頷いて、意を決して振り返った。
振り向いた視線の先には誰もいない。
だけど、今度は、お腹をつつかれた。
「ひゃい!!!」
俺は変な声を上げながら、思わず手をあげてしまった。
「んぁ?子供?」
有栖川の声に視線を下にやると、カボチャの仮装をした男の子と、何かのプリンセスの格好をした女の子が声をそろえて『トリック・オア・トリートォー』と言って両手を差し出してきていた。
「ト、トリック・オア・トリートって言われてもな……俺たちお菓子なんて持ってない……ってアリス!何してんだよ。」
有栖川は、ポケットから何か取りだすと、視線を子供と合わせるためにしゃがみ込んだ。
最初のコメントを投稿しよう!