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「ルビーも水晶も確かに美味しかったですけれど。正直、抵抗はありますよね」
私にだって常識はあるのです。いえ本当に美味しかったんですけど。それに本物の鉱石である、食べ物として考えるには少々お値段が怖い。
「それは残念ですね。ですが、気が向いたらいつでも言ってください。用意はしておりますので」
笑顔を浮かべてマスターが言う。同好の士を見つけて逃すまいというとこだろうか、これは諦めてないな。
聞きたいことは聞いたのでその後はいつも通りに砂糖菓子とお茶をいただいて帰宅した。
季節がいくつか巡る頃。慣れた裏道を通り抜け、都会の死角に隠れたいつものあの店へ。
模造品の砂糖菓子も勿論美味しく、鉱石喫茶店でしか食べれないこともあり私は常連として通い続けている。マスターのあの手この手の勧誘に屈して最近は本物にも手を出すようになってしまった。
いえ、勧誘が無くてもその内食べていたと思うのですが。あんなにキラキラ綺麗な美味しい物、我慢できるようなものでは無かったのだ。
さて、今日は砂糖菓子か本物にするか。輝く鉱石を思い浮かべながらカランコロンとお店のドアを開けるのでした。
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