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お気に入りのあのお店
裏道を歩いて歩いてビルの谷間を進んでいく。
都会の死角、他の建物に隠れるようにお目当ての"鉱石喫茶店"はあるのです。
「こんにちわー」
カランコロンと扉を鳴らしながらお店に入る。
「おや、美咲さん。いらっしゃいませ」
見た目、40代辺り。ワイシャツにベストという上品な格好の物腰柔らかなマスターが出迎えてくれた。
「いつもの席、空いてますよ」
ありがとうございます、と返事をしながら席に着く。
木の柱梁に煉瓦の壁、暗めの照明に隠れ家めいた立地も相まって落ち着いた雰囲気のお店だ。
店内は大きくはないが、混雑しているのを見た事が無く人混みの苦手な私にとってはこの都会の中で数少ない心休める場所であり、すっかり常連になっている。
常連になった理由はもう一つ、この喫茶店で出されるお菓子だ。
例えば葡萄味の紫水晶、薄力粉を焼いた砂漠の薔薇、牛乳と蜂蜜の白雲母。
煌めきはそのままに、お砂糖で出来たお菓子の宝石を食べられるこのお店のファンタジーさに私は心を打ち抜かれたのです。
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