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Aが死んだ後、ペット専門の葬儀屋に連絡した。時刻は七時半を過ぎた頃。午前中は都合がつかないので午後お迎えに行きますと言われた。Aは下半身だけトイレに乗り、頭がケージの床にそのまま擦り付けられている状態だったので、全体にトイレシートを敷いて、周りの柵も取り外し、ケージを大きく使って横たえることにした。窓側にお腹を、部屋の内側に背中を向けている格好だ。
葬儀屋に指示された通り、保冷剤をお腹付近にたくさん乗せた。お腹の真ん中、脇あたり、体の下側。とにかくたくさん。そしてクリーム色のバスタオルを上からかけてあげた。頭は出したままにした。
目を閉じてあげれば良かったけれど、試したときにはもう瞼が固くなっていたので、変に動かすのはやめた。瞳孔の開いた眼球はそのまま天井を見上げていた。午後を待つばかりの時間、私は事あるごとにAのとこに行って、タオルめくっては体を撫でた。
あのとき一番触ったのは耳だ。体を触るときは余計な力を加えないようにと毛の表面を撫でたり足を握ったりするだけに留めたが、耳は死後硬直が始まってもずっとやわらかかった。子供の頃から、Aの耳は特にお気に入りだった。裏側は黒い毛が混じって少し暗いミルクティーのような色をしていて、手触りも抜群だった。
耳の側面外側、根元に近い方には切れ目が二ヶ所入っていて、えらのようになった部分が特に気持ち良いのだ。こちらは白いわたあめ色の毛。耳の根元に力をこめると、全体をぐるりと裏返すことができ、昔はよくいたずらしたものだった。
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