夏の低音

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「いた、いたいた! 決まったよ、ベース!」 「いや、まだ酒井がやってくれるとは言ってないだろ、直登」 「あ、あそうか......なあ酒井、俺達とバンドやらないか?」 「俺はドラム担当で、直登はギター、で、酒井はベースって事で、どう?」  俺の誘いに、輪をかけて公秋も勧誘する。 「一つだけ、条件があるんだけど......そ、それを聞いてくれるのなら、一緒にバンドしたい」 「条件?」 「おう、何だよ、言ってみ」 「下の名前で呼び合いたい......」 「「は?」」 「............」 呆気に取られる俺達、 「あ、いや」 俺達の頭によぎったのは恐らく同じことだと思う。 「決定だろーー!!」  酒井の強張っていた表情が一気に緩み、苦笑いをする。 「何言ってんだよ、バンド仲間は、下の名前で呼び合うほど、仲良くなくちゃな、直登」 「そうだよ、そんな事で驚かすなよ、夏輝」 「よろしくな、夏輝」 「よ、よろしく、き、公秋と、な、直登」 「はははっ、泣くなよ夏輝ー!」 「なっ、なな泣いてないよー」
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