冬の歌声

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「正村ってお前、隣のクラスのあの、正村か?」  確かに隣のクラスに正村という奴はいる、しかしそいつはバンドなんてするような奴には見えない、見た感じは完全にチャラいし、抜群のイケメン。モデルのようなその外見は、女子達に物凄く人気があり、毎日遊び回っているようで、到底練習なんてしている暇は無いだろう。 「まあ、とりあえず正村に聞いてみよう」  俺達は、一斉に席を立った。  夏の訪れを待ちわびながら、じめじめと蒸し暑い日が続く中、今日は珍しくカラッと晴れていた――  それはまるで、全てがうまくいくという事を祝ってくれているようだ.......と、俺は勝手に思い込んでいた。  上がり続けるテンションと、気温のせいで、正村を捜す足が速くなる。  隣のクラスで、聞き廻っていると、一人の女子が話かけてきた。 「あんたら、冬馬(とうま)捜してんの?」 「と、冬馬?」  黒髪のポニーテール、切れ長の目は、素っ気なく話しかけてきた彼女の無愛想なイメージを増加させる。 「正村冬馬(まさむらとうま)!」 「あ、ああ、うん、どこにいるか知らない?」 「は? 自分で捜したら?」 「何? お前っ、喧嘩――――」 「やめろっ、直登」  俺の肩を掴み引っ張り教室を出る公秋。
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