春の風

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「ちょっ、公秋」 「どうぞ」  大きなスピーカーのような物に線を差し込み、もう片方をギターに差し込んで、公秋に差し出した。 「あ、いや、ちょっと直登、先に弾いてみ」 「は! 無理にきまってんだろが」 「いやいや、大丈夫だから」  公秋は自分の座っていたパイプ椅子に俺を座らせ、手に持ったギターを渡してきた。 「なんでもいいですよ、ジャーンとこのピックで弾いてみて下さい」  笑顔が爽やかな店員さんだ、プラスチックでできた三角形のピックを渡され、恐々と弦に当て、下に下ろした。  ジ、ジャララララーン  店内にギター音が響き渡った――――  なんだこれ、  なんか、  スゲー!!  それが俺の人生で、初めてギターを弾いた記念すべき瞬間だった――――
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