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冬の歌声
夏輝が参加して一ヶ月、今日は【バンマス】の発売日だ、学校を抜け買ってきた雑誌を広げる昼休み。
「で、後はボーカルだな」
「あ? ああ......」
新刊が出ると直ぐに買おうと決めていたバンド雑誌【バンマス】、ページの隅々まで読む俺は、吸収性の高いスポンジに水を落とした時のように、その全てが頭に入ってくる、突然、夢中で読んでいたバンマスを取り上げる公秋、
「おい!」
「おい、じゃないよ、ボーカル!」
「ボーカルなんて、適当でいいんじゃねえの?」
「バカかお前!!」
バンッと、机を両手で叩く公秋の顔は真剣そのものだ。
「何だよ、そんな怖い顔してー」
「お前、ボーカルこそバンドの華だぞ、そのバンドのイメージはボーカルで決まると言っても過言ではないんだぞ」
「いや、音だろ! バンドはいかにカッコイイ音を出すのかが、勝負の鍵じゃねえのかよ」
「じゃあお前は――――」
「公秋、直登、これこれ!」
言い合う俺達の間に割り込んできたのは夏輝だった。その手には新しく出たバンマスが持たれている。顔や性格に似合わず、夏輝は雑誌を買ってから登校してきた。
「おう、夏輝、どこでサボってたんだ?」
「いいから、ここ、ここ見てよ」
〈メンバー募集、当方ボーカルとギター、ロックを中心にやりたいので、歳が近い方のドラム、ベース、リードギターを募集します。――色虹館高校、正村――〉
「「えー!」」
それにしても、俺達はよく同じタイミングで声が重なる、色虹館高校は俺達の通う高校、その高校に同じロックバンドをしている奴らがいるなんて。
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