彼女を避けてしまう僕

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   1  僕は平凡な高校に通う津村達之だ。あと2ヶ月ほどで遂に3年生となる。だと言うのに、僕は未だに友達が少ない。昼食は給食制で、自分の席で食べるのだが、そのあとはみんなそれぞれのグループで集まって雑談を始める。そんな風潮に僕は馴染めない。昼食を食べ終わったからって、誰かと雑談をするたちでもないし、僕はいつだって机にうつ伏せに昼寝をするか、大好きな天文学の本でも読んでいる。だから今日も、うるさい教室のなか、ただ一人黙々と宇宙のビジュアル書を捲っていた。しかし、突然の呼び掛けにその読書の時間は妨害された。  「邪魔なんだけど?よそで読んでてくんない?」クラスの女子がそう言うなり僕を手で払った。内心はとてつもない怒りに燃えていたのだが、それを口で言えるほど僕は強くなかった。  僕はフラフラと教室を出ると、階段を登って4階の図書館に行った。扉には『私語厳禁!』と書かれていた。僕にとっては素晴らしい言葉であった。私語厳禁なら、教室のようなグループを作る奴らは集うわけない。それはソロで行動している僕にとってはとても心地いいもので、実際これからは昼休みは図書館に来ようかとも思う。  自分の背丈よりもでかい本棚がずらっと並ぶ中、狭い通路を歩いていく。中には私語をしている人はおらず、とっても静かであった。僕は迷わずに天文の文字が書いてある本棚に向かい、その本棚を見て新刊が来ていないかを確認する。するとそこには「最新天文写真集 太陽系の神秘」と言うのが追加されていた。僕はまずそれを手に取ると、ペラペラページを捲ってみる。そこには勿論のこと惑星の『水金地火木土天海』に、『冥(王星)』『カロン』『エリス』『ケレス』等の準惑星、あとは惑星の衛星たちの最新写真が項目ごとに解説つきで載っていた。大抵はNASAのホームページで見れるようなものではあったが、このように日本語の解説で解りやすく見れるのは大切だ。僕はページを捲って、大好きな木星の衛星『エウロパ』のページを凝視する。表面は氷でその分厚い氷の下には地球より深い海が広がっていると言う。その星に僕は憧れを抱く。何故かと言うと、きっとうるさい陸上がない所を夢見ているからだろうか?
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