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それは昔からの事で、いつからとは判らないが、エルフとヒトはお互いに嫌悪し合っていた。
互いに愚かしい下等な種族だと思い合っていた。
少なくともエルフにとってのヒト族は、野蛮で時には利益のために襲って来る事もある危険な民族という認識。
そういう事もあり交流はほとんど無く、距離を取って隠れるように暮らしていた。
だから私が人間に興味があるとつぶやいた日の夜には長老が慌てて真意を聞きに来たくらいだった。
長老はヒト族などと関わっても良い事など無いと朝まで私にとうとうと説教して帰っていったが、私は数日後、結局好奇心を抑えられずにこっそり村を離れて自分の村に一番近いヒト族の村の前に立っていた。
私は持ち前の長耳が目立たぬように耳が隠れるくらいのフードをかぶり、村の門をくぐって慎重に人ごみに混じっていった。
静かな私の村と違って喧騒に満ちたヒト族の村に私は少なからず興奮を覚え、あちこちを見て回る。
見る物聞く物がエルフのそれとは違い、私はついつい止めておけば良いのに、酒場にまで入ってしまった。
カウンターまで行くと、店のマスターと思われる優しそうな男が声をかけてくる。
見た目は青年だが、ヒト族の事だからきっと私よりもずっとずっと若いのだろう。
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