2.怪雨

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  「マジかよ……」 「マジ」 「聖人君子か。たまんねぇの?」 「うっせえな……」  日曜日。  久々にひとりでウインドーショッピングでも―――というのは口実で、休日が重なった彼女とずっと家で顔を突き合わせているのも色々と辛いというわけで街ブラしてみたら、大学時代の悪友とばったり会った。  メシでも食うかと喫煙者がガラスで区切られているカフェへ赴き、互いの近況の流れで彼女の話題になったのだ。  勿論、彼女が泣いていた夜のことは話していない。  好きな女と同居していると簡潔に言ったまでで、それが尚更信じられないといったふうだった。    3本目の煙草に火を点けた悪友、結城はため息をついている。  薬指と中指に煙草を挟んで確認するように振り上げる様は、大学時代に結城が女子たちの間でカッコイイと騒がれていたことを思い出させた。  たしかにカッコイイな。  喫煙者には肩身の狭い世の中だけど、色男は何やったって決まるもんは決まる。  俺がこいつの顔面偏差値だったらもっと彼女にも強気に迫って――― 「オイ聞いてんのか」  ベシッと髪を叩かれて我に返った。  ブラックコーヒーを飲んだ結城は、睨んでからまた煙草を振る。 「彼女に惚れてんだろ」 「まー……可愛いなって思ってたし」 「で、家に連れ込むとこまで頑張ったんだろ」 「連れ込むっつーと違う気が……」 「なんだよ。しけこむ?」 「もっとちげーよバカ。同居だ同居。流行りのシェアハウス」 「そんで?  手は繋いだと」 「……まあ」  頷くと、「童貞の中坊かよ」とまたため息をつかれた。  結城に言われなくてもわかってる。俺だってそんな話されたら、「お前何グズグズしてんだよ」くらいのことは言う。  だけど彼女にそんなこと出来ない。 「……信頼してますって顔に貼りつけてあんだぜ?」 「なんだ牽制されてんの? 見込みねぇじゃん」 「ぐっ」  そうかもしれない。  でも1ミリも好きでもない男と手なんか繋ぐだろうか?  俺だったら嫌だ。好きでもない女と手を繋ぐなんて、金もらっても考えるレベルに嫌だ。なんならヤるより嫌だ。  だから彼女も少なからず好意はあると、自分では思っている。  例え恋愛ではなくて親愛だとしても。  注文したサンドウィッチを届けてくれた可愛い店員の女の子に笑顔を振りまいている結城を呆れて見つつ、俺は2本目の煙草に火を点けた。
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