4.霧雨

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「自分勝手だった自分を忘れたくて……利用してた部分も絶対あると思うし」 「………」 「だから俺たちは、きっと……」  意図的に首をかたむけて彼女の頭に軽くぶつけてみた。  えい、と声がして反撃された。ちっとも痛くないけど。  繋いだ手からはとうに力は抜けている。  解こうと思えば簡単にできるけど、俺も彼女もそうしようとはしなかった。  続きを問われるかと思ったけど、彼女は何も訊ねてこなかった。  もう一度目を閉じる。  しとしとと、穏やかな雨の音だけが室内に充ちていった。
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