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『みーん、みーん』
セミの鳴き声がうるさい。ただでさえこの暑さ、 この声を聞くたびにイライラする。
「暑い、もう死にそう。クーラー使おう。」
「使ってもいいですけど、今月赤字ですよ。」
ここは、探偵事務所だ。
街外れの人通りのない場所にある貧乏事務所。
クーラーも付けるのに躊躇する貧乏事務所。
貧乏事務所、貧乏事務所、…………。
もうよそう、悲しくなる。
私は、この貧……、探偵事務所で働いている。
ここは、私と所長だけ。
「はー、こうも暑いと仕事する気にもなれないな」
「その前に仕事ないでしょう。」
仕事がない。月に1、二度あるぐらいしかない。
「もう、いや!ブラック過ぎでしょ!!」
「クーラーも使えない、仕事もない。」
「何言ってるんだ。ホワイトだろ。」
「仕事はないし、それに給料はちゃんと出てるだろ」
確かに給料はそこそこもらっている。
ましてや普通のOLよりもらってるかもしれない。
「そうだけど………。」
「あの?。すいません。」
「あっ、はい?」
「ここは探偵事務所ですか?」
「えぇ、そうですけど。」
そこには20代くらい女性が立っていた。
「あの………。依頼ですか?」
「あっ、はい。」
「どうぞこちらです。あっ、すいません。暑いでしょう。いま付けます。」
私はクーラーをつけた。
(はー、涼しい生き返る)
「あっ、申し遅れました。
私、鈴木楓(すずき かえで)です。」
「それと、所長の小田村風磨(おだむら ふうま)です。よろしくお願いいたします。」
「えっと、ご依頼の方は……。」
私がそう言うと、女性はバックから写真を取り出した。
「あの。この人を探して欲しいんですけど。」
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