純愛

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依存。 その言葉が導く先を私はよく知っている。 そこから脱しないと未来は無い。 ……依存の怖さは見てきている。 それと同じように抜け出せない事も知っている。 そして、抜け出したく無い気持ちも理解している。 「……そんなに藤宮さんに抱かれてぇなら、S.Bに行けば? あの人、まだあそこの会員だったと思うけど ひかりが藤宮さん藤宮さんーなんって言うからマジで俺ノイローゼ気味なんだけど」 世の中、最近の流行はマイノリティだと思う。 これは俗世から切り離された私が俗世を知る為にあらゆる情報を集めて、集計した結果。 ファッションはアバンギャルドが持て囃され、性的マイノリティも空前のブーム。 そんな流行りのマイノリティでも、軽い気持ちで手を出してはいけないマイノリティもある。 それが、ネクロフィリア。 日本語に直すと、死体愛好家。 「……瑞樹、あの店の話を今度もう一度したら殺す」 「そうだったわ! お前藤宮さんの許可無いとここから出れねぇーんだよなぁー あーマジかわいそー」 瑞樹はキッチンのカウンターを叩きながら、ケラケラと笑い始めた。 体をくの字に曲げてお腹を抱えるその姿にいつもの苛立ちを感じながら、私はキッチンを出る。 瑞樹は私の恋を面白おかしく話題にする。 私を揶揄うのが好物だ。 2人が住むのには広過ぎるリビング。 真っ赤なペディキュアが施された足でそのリビングを歩く。 壁に掛けられた巨大な薄型テレビを乱暴に付け、瑞樹の笑い声を大音量でかき消した。 私が愛した人は私を愛してはくれない。 藤宮仁。 私が心の底から欲した男。 美しいその男はとんでもない性癖の持ち主。 どんな手を使っても越えたい壁。 どんな手を使ってでも越えられない壁。 「チェリーにこの気持ちは分からないわ」
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