純愛

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セックスフレンドが有名人だとウィキペディアで調べがつくから、楽だと初めて知った。 世の中は不公平だと井川さんを見ると理解出来る。 天は二物も三物もこの男に与えた。 スタイル良し、面良し、声良し。 声が良ければ面は汚くあれ。 キャラクターは愛せても中の人を愛せないぐらいに不細工であれ。 ……なんて思ったところで、世の中は不公平だと納得するしか無い。 井川秀彰は大御所声優と呼ばれるだけあって、今だに第一線で活躍している。 フェロモン溢れる艶やかな声を持つ彼は、時に高い声を出し若いキャラクターを演じる。 また、低い声を出し悪役さえもこなしてしまう。 アニメの中でキャラクターを通して、女に悲鳴をあげさせてしまう井川さん。 女が一番弱いエロい声を出せるのが、井川さんの強み。 それがまた俳優並みに整った顔立ちをしているのだから罪作りな男だと心底思う。 世の中には良い年の取り方をした、ダンディーな大人の男性が少数派にいる。 ごくごく僅かなその完璧ともいわれる出来は、年の壁さえも忘れさせてくれる。 私はおじさんキラーでもなんでもない。 寝室を後にして向かったのはキッチン。 高級マンションに似合う、アイランドキッチン。 天板は黒色の大理石。 側面はウッド。 この素晴らしいキッチンで2人分の料理を作るのなんて簡単。 というより、2人分しか作らないなんて、宝の持ち腐れ。 冷蔵庫を開けて中を見れば、食材が跡形も無く消えていた。 あるのは私が食べるフルーツだけ。 キウイをひとつ取り出してみる。 喉が欲したのはこれじゃない。 甘酸っぱいイチゴ。 それが私の喉を潤してくれればそれだけでいい。 そんな時、玄関から物音がした。 私は包丁立てに目線を向ける。 人形に突き刺さった包丁。 悪趣味全開のその包丁立てから包丁を抜く。 人形の頭に突き刺さった包丁は料理用ではない。
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