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しかし夫は顔を上げ、私の顔を見て言ってくれた。
「でも、今日のパーティーで全てが吹っ切れたよ。俺は1人じゃない……そう実感できたよ。だから、今日は本当にありがとう」
夫は再度、パーティーを開いた私にお礼を述べた。
私は泣きそうになったが、夫の話は続いていた。
「でも、まだまだ俺は立派な父親じゃないな……」
「どういう事?」
「スピーチでも言ったが、俺は娘の事をあんましり考えていなかった。望歌が俺を祝いたいだなんて考えもしなかった。それが悔やまれてならない」
その事で夫は酷く落ち込むように、顔を俯いた。
そんな夫に私は彼の手を握った。
「そんな事ないわよ。あなたは立派に父親を果たしてるわ」
「香澄……」
「だって、嘘とも知らずに風邪をひいたと言ったら、急いで来てくれたじゃない。立派に父親を果たしている証拠よ。だから、もっと自身を持って」
私の励ましに元気が出たのか、夫の顔から微笑みが戻ってきた。
「香澄……ありがとう」
夫は私の唇に近づくと、私はそれを受け入れた。
「あっ、そうそう、あなたにもう一つ、プレゼントがあるの」
「なんだい?」
私はスマホを取り出し、望歌のケーキ作りの動画を夫に見せてあげた。
「可愛いいなぁ」
「ええ、可愛い」
私達はお互いを寄り添いながら、娘の動画を眺めていた。
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