第7話 闇の視線

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家に帰ると俺は娘との時間を過ごした。 一緒にお風呂に入り、歯磨きをさせ、この娘が寝るまで隣で絵本を読み聞かせた。 読み聞かせが終わった後、俺は娘の方を見た。 既にぐっすりと眠っており、良い夢を見ているのか、可愛い寝顔を見せてくれた。 「おやすみ……いい夢を見てね」 俺は娘の耳元で小さく囁くと、娘のおでこにキスをし、掛け布団を直してから寝室を後にした。 キッチンでは妻が冷蔵庫を背もたれにして、お酒を飲んでいた。 妻は酒を飲みすぎると酒乱となり180度、人が変貌してしまう。 だが結婚後はお酒はほどほどに飲むようになり、娘が生まれてからは、グラス一杯しか飲まないようになっていた。 そんな妻がビール瓶片手で飲むということは非常に珍しい事だが、これは俺に対する怒りの表れだった。 「香澄……」 俺はキッチンへと近づき、ビールが注がれたコップを片手で飲む妻に声をかけた。 名前を呼ばれた妻は何も言わずに俺の方へと顔を向けた。 無表情で疲れ切った顔をしていたが、その顔からは怒りと悲しみが沸々と伝わってくるのが肌で感じた。 俺は一度、深呼吸をした後、ゆっくりと口を開けた。 「話がある」
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