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その夜、私は仕事終わりに、あるバーに立ち寄った。
中に入ると、既に課長がカウンター席の片隅に座っていた。
私はそのまま、課長の隣に座るとマスターにスクリュー・ドライバーを頼んだ。
「では、報告を聞こう」
課長は世間話などせずに、本題に入った。
私はお昼の件を全て話した。
課長は黙って聞いていたが、彼の返答は意外なものだった。
「とりあえず、ミズ・ピューマに近づく良い機会だ。そのまま奴の次の接触を待て」
「安原さんと同じ事を言うんですね」
「当然だ。俺達も知らない最強の殺し屋がお前に興味を持った。お前はもっとそれを誇りに思うべきだ」
「誇り……ですか……」
誇りと言われても正直、ピンと来なかった。
いいや、嬉しくなかった。
確かに私は殺し屋だ。
でも、これも灰谷に復讐する為になったんだ。
終わったら、即、引退でもと考えていた。
それが、ズルズルと裏社会に引きずり込まれる感じがしてならなかった。
だから今夜、課長に私の本音をぶつけてみた。
私の来た道は灰谷悠治に繋がっているのかを……
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