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あの夜の会話以降、夫の口数が大幅に減った。
基本的な挨拶や世間話などはするが、必要最低限のことしか言わなくなった。
まるで、私の不倫がバレた時に戻ったみたいだった。
それでも、あの頃と違う所といえば、私や娘には何食わぬ笑顔を見せてくれていた所だ。
焦りや動揺など一切見せずに、平然とした態度で毎日を過ごしていた。
だけど、その笑顔を見る度に私は疑問に思う。
命が狙われてるのに、どうしてそこまで笑顔が見せられるのかと……
用心棒が見張っているとはいえ、100%安心できないのは分かっている筈なのにだ。
私はそんな強がりの笑顔を見せる夫に不満を持った。
今まで黙っていたのにも、私は許せなかった。
いかに自分のみしか狙われてるにしても、ちゃんと言って欲しかった。
堅気の私に足を突っ込ませたくないにせよ、何かしらの力になりたかった。
お互いに助け合ってこその夫婦というものなのに……
なんて、色々と夫に対する不満と怒りを心の中でぶちまけたが、それを口に出す権利は私にはなかった。
何故なら、私も夫と同じく大きな危機を抱えていた。
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