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「お母さん、深美さんはどうだった?」
「望歌ちゃんといっぱい遊んでたわよ」
「昨夜は何もなかった?」
「いいえ。何もなかったわ」
「そう……今日のお昼頃には帰るからね」
「分かったわ。気をつけてね」
「はーい」
そう言うと、私は電話を切った。
するとそこに着替えを済ませた悠治さんがリビングに入ってきた。
「望歌?変わって」
夫は何も知らずに私のスマホに向けて手を伸ばした。
「ごめん。もう切っちゃた」
私はすぐに謝ると、夫は何も言わずに手を戻した。
「本当にごめんね」
「いやいいよ。それより望歌はどうだった?」
夫は気にするなといわんばかりの微笑みを浮かべると、すかさず娘の事を尋ねた。
「大丈夫。今日も元気いっぱいよ。でもすっかり、深美さんっ子になっちゃった」
私は娘が元気な事を伝えると、深美さんに懐いてる事を話した。
すると悠治さんは私に懸念を察するように、両手に肩をかけた。
「深美さんはちゃんと約束を守ってくれた。それだけ満足しなくちゃ」
「あなた………」
「早く朝ごはんを食べて、娘をハグしよう。大丈夫、娘の一番はママだよ」
悠治さんの励ましで少しは楽になった。
でも何か物足りない気がして、今度は私が付け加えるように言った。
「それとパパもね」
私は夫の頬にキスをした。
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