第14話 情炎

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それから私達は旅館にあるレストランで遅い朝食をとった。 時間制のビュッフェにしたが、既に11時を過ぎていたので、料理は朝食から昼食へと変わろうとしていた。 私と悠治さんは皿に盛った料理を持って、海の見えるバルコニーに入り、自分達の席へと座った。 「香澄……そんなに食って大丈夫か?」 食べる前に夫は私のお皿を見ながら言った。 「そう言うあなたこそ、太るわよ」 私は自分も人の事が言えないと言わんばかりに夫のお皿を見た。 「だって、腹が減って仕方ないんだ」 「私だって同じよ。もうお腹ペコペコ」 「まぁ、朝っぱらから運動すれば腹も減るわな」 「ちょっと、誰かに聞かれたらどうするの」 私は頬を赤く染まりながら静かな声で夫を窘めた。 だが夫は平気な顔をしていた。 「大丈夫だよ。こんなにも綺麗な海を目の当たりにしながら、俺達の会話を盗み聞こうだなんて人はいやしないよ」 確かにそうだ。 バルコニーには私達の他にも家族やカップルなどがいたが、その殆どが景色を眺めて各々の会話を楽しんでいた。 「それでも、やめてよね」 「悪かったよ。もうこれ以上は言わない。さっ、食べよう食べよう」 ちゃんと反省したのか、夫は私に頭を下げた。 そして顔を上げると、すぐにご飯を食べ始めた。 ――よっぽどお腹が空いてたんだな。 箸を進んで口に運ぶ夫を見て、私も空腹の限界が頂点に達した。 それからは綺麗な海を眺めながら、食事を楽しんだ。
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