第14話 情炎

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私達のお腹が満たされた後、食後のデザートとコーヒーを飲んでいると、後ろの席に座っている2人の男性の会話が自然と耳に入ってきた。 「それにしても先輩、ここで昨晩あんな事件が起きたのに皆、気付いてないのはおかしな話ですよね」 ――あんな事件? ここで昨晩起きた事件といえば、しか思い浮かばなかった。 「当たり前だろ。ここに来る客は皆、疲れを癒しに来ているんだ。物騒な事は早々に片付けた方がいいに決まってる」 「そうですよね」 「それに事件が起きたのは夜だし、殺人が起きた訳でもない」 「だけど集団暴行ですよ。しかも多くの者がかなりの深手を負わされて、骨やら歯が砕かれたんですよ。中には空手の優勝者がいて、こいつの方が特に酷いと救急隊員の人が言ってました」 「だからといって同情はしないけどな。あいつらと同行していた女子学生によると、いかがわしいサークルの仲間だったらしいからな」 「先輩はあの女子学生の1人がやったと思いますか?」 「いいや、ないな。あの女子学生達ではあそこまではいかない」 「集団で男子学生達を襲いかかったってのは有り得ませんか?」 「息を吹き返した被害者の証言からして相手は1人だ。1人の影が右往左往に暴れ回っていたのを暗い中で、何とか見えたと言っていたからな」 「一体、誰なんでしょうね」 「さぁな、いずれにしろ只者ではないのは確かなようだ」 「“幻影の暗殺者”だったりして」 咄嗟に口にした後輩刑事の一言に私は反応した。 それは一緒に聞いてた悠治さんも同じで、コーヒーを口に入れながら固まってしまっていた。
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