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高校時代からの友人は週刊誌で連載をもつ売れっ子漫画家だ。来期のアニメ化も決定している。
「俺、チート過ぎねえ?」
千場は、まず純粋に絵が上手い。誰が描いたかさえ知らされなければ、コイツのロリ顔ちっぱい妹系美少女は史上最強に萌える。
しかし千場は数少ない友人であるオレの嗜好など一切無視した画風で、少年たちの熱い友情を描いている。
そのストーリー構成力も素晴らしい。読者が気付かぬうちに散りばめられた伏線を回収していく様など圧巻の一言だ。
それを証明するかのように、初めての単行本は増刷に増刷を重ねて、あっという間に新進気鋭の漫画家として名を馳せた。その上、初連載で三年も経たないうちに、夕方ゴールデンタイムのアニメ化が決定すれば、調子に乗って当たり前かもしれない。
「みてろよ、2クール、いや3クール目決定は確実だろうが、そうすりゃすぐ映画化も決まるぜ。舞台化は正直勘弁したいところだが、2. 5次元俳優ファンの読者の楽しみを奪う訳にもいかねえし、まあ受けてやるよ」
「お前はどこから目線で言ってんだよ?」
「原作者様だよ。つーか、神?神だな。やべえ、俺、神だったわ」
確かにコイツの漫画のなかでは、コイツは神かもしれない。
「いいや、お前はただの千場だ!」
危ない、危うくオレまでコイツのわけのわからない勢いに流されるところだった。
千場が軽く笑った。
「お前はどうなんだよ?相変わらず小説書いてるんだろ?」
「まあな」
そこそこの会社に就職しながら、こそこそと小説を書いては投稿してるのを知ってるのはコイツだけだ。
漫画を描こうと思うと告げられた時、オレも小説を投稿していると応えてしまった。
まさかここまで差をつけられるとは、あの薄汚くも極上にチャーハンが美味いラーメン屋で一体誰が予想できたのか?
ああでもあの頃から、コイツは妙な自信に満ち溢れていた。
「そうだ。お前、オレの小説に挿し絵付けてくれよ。忙しそうだから漫画化は無理だろ?」
自嘲気味にもなる。コイツの挿し絵さえあれば、オレの小説も皆に読んでもらえるかもしれない。
「嫌だね」
「え?」
あまりにあっさり断られ、一瞬、対応が遅れる。
そこで、珍しく自称神こと漫画家千場多迦雪は唇を尖らせた。
「誰がするかよ、俺より才能がある奴の手伝いなんか」
終
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